こんにちは。京都大学女子バスケットボール部の方城素和です。
今回も記事に興味を持っていただきありがとうございます。
今回も前回に引き続き10分程度でヘルプサイドのリバウンドについて書かせていただきます。
ヘルプサイドでボックスアウトをする状況とは
前回ヘルプサイドのボックスアウトが重要であるという話をしましたが、今回はまずヘルプサイドのボックスアウトが必要となる状況について考察していきたいと思います。
↓前回の記事↓
例としてウイングにボールがある場合について考えてみたいと思います。この場合、ボールマンディフェンスは「No Middle(ノーミドル)」or「No Base(ノーベース)」のどちらかの戦略をとることが多いと思います。今回はNo Middleについて検討していきます。
最も単純なオフェンスパターンとして考えられるのはベースライン側へのドライブです。この展開からのシュートを簡略ですが考察してみたいと思います。
a. ドリブラーが自分のマークマンを抜けていない、もしくはヘルプサイドの選手がヘルプに行く前にシュートを打たれるパターン
このような場合ヘルプサイドの選手はペイント付近からあまり大きく動いていない状態でボックスアウトを開始することになります。もっともシンプルなヘルプサイドボックスアウトの状況といえます。
b. ドリブラーがリングに向かい、ヘルプサイドの選手がヘルプに出た時にドリブラーにシュートを打たれるパターン
この場合多くのチームがローテーションを行うと考えられます。その場合には①自分のプレーヤーに戻ってボックスアウトを行う②スイッチしてボックスアウトを行うの2パターンが想定されます。どちらの状況においてもa. と比べてヘルプに出ている分自分のマークマンとの距離が離れていて、さらにドリブラーの方を見ているため自分のマークマンから目が切れている状態から開始します。さらにこの場合は①と②の状況判断の負荷も加わります。
c. ヘルプに出た時にドリブラーが自分のマークマンにキックアウトしてシュートを打たれるパターン
この場合もb. と同様に①自分のプレーヤーに戻ってボックスアウトを行う②スイッチしてボックスアウトを行うの2パターンが想定されます。①の場合はクローズアウトからシューターボックスアウトの状況になります。②の場合はさらに誰とスイッチするのかという判断も必要になります。
d. ヘルプに出た時にドリブラーが自分以外の選手のマークマンにキックアウトしてシュートを打たれるパターン
この場合もb. やc. と同様に①自分のプレーヤーに戻ってボックスアウトを行う②スイッチしてボックスアウトを行うの2パターンが想定されますが、自分がどこにローテーションするかをパスが出た先によって判断する必要がありb. やc. よりも高い負荷がかかると考えられます。
ここでは以上の4つにざっくりと分類してみました。
流れを追ってまとめると以下の図のようになります。
この図からボックスアウト以前に少なくとも2回は状況判断をすることが必要であることがわかります。
つまりリバウンドを獲得できないという結果が出た場合に必ずしもボックスアウトができていないということが原因とは限らないということです。
さらにそれまでの状況によってディフェンスリバウンドを取るための難易度が違うということも言えると思われます。
練習を考える上でコーチが判断するための資料
コーチは試合から課題を見つけてそれを修正するために練習メニューを作成することが仕事の1つです。
ゲームを終えてスタッツ分析するとディフェンスリバウンド獲得数が低いということがわかりました。なので明日の練習ではディフェンスリバウンドを取るためにボックスアウトの練習を行いましょう。
こういった考え方はスタッツに基づく合理的な考え方であるといえるでしょう。
しかしながらこのスタッツ分析だけでゲームで起きたことを正確に捉えられているでしょうか?
例えばチームとしてこのゲームで早いヘルプによってオフェンスをペイントエリア内に入れないようなディフェンスができていたとします。
その結果相手オフェンスのジャンプシュートが増加しました。しかしながらローテーションが完全にはできておらず、どのオフェンスをボックスアウトするか判断する前にオフェンスリバウンドを許す場面が増えてしまいました。
この場合、ローテーションにおける判断力を高めることがボックスアウトよりもディフェンスリバウンドの獲得のために必要な練習であるといえると思います。
これはゲームをただ見ているだけではなく、「なにが起きた結果」オフェンスリバウンドを取られているのか、もっといえば「どの段階で」ミスが生じているか、等を考えながらゲームに取り組まなければなければならないということです。
さらに言えば自分たちのディフェンスが「どういう狙い」があって「何を」仕掛けているか、ということがなければ単なる対症療法で終わってしまいます。
先ほどの例で言えば、早いヘルプは自分たちが狙って行っていることなのか、それとも自分のマークマンよりもボールマンに気を取られた結果偶然起こっていることなのか、この違いに気付かなければ次の練習でそもそも早いヘルプが再現できるかもわかりません。
つまりコーチは当たり前のことではありますが「自分たちが何を狙うのか」「そのために何に重点を置くのか」を明確にしておかなければ、たとえディフェンスリバウンドのように普遍的な要素に対してもどのような練習メニューを行うことが必要なのか決めることができないのです。
最後に
今回はヘルプサイドのボックスアウトの状況について考えるために、そこまでのディフェンスで何が起きているのかを整理してみました。思っていた以上に様々な状況がありウイングにボールがありディフェンスがNo Middleの場合のみでも十分な分量になりました。
リバウンドは特に結果が重要視されますが、練習を考える上ではその過程が重視されるべきだと思います。特に「練習した結果できるようになったこと」と「練習すべきこと」に分けて捉えられると良いのではないかと考えています。
上の例で言えばタイムアウトなどでは「いいヘルプができているよ!」と練習してきたことを認めてあげて、ハーフタイムやゲーム後には「ヘルプがよくなってきたから次はその後のローテーションを意識しよう。ローテーションがよくなればいいポジションが取れるからボックスアウトしてリバウンドが取れるようになるよ。」といった声かけをしてあげると選手も理由を理解して前向きに次からの練習に取り組めるのではないでしょうか。
少し話が広がってしまいましたが、今回はリバウンドまでの状況について整理しました。次回はもう少し具体的な練習方法について考察してみたいと思います。
今回も最後までお付き合い下さりありがとうございました。
文 : 方城 素和
編集・校閲 : 赤津 誠一郎
↓前回の記事↓
編集後記
リバウンドを取れない原因を
「ボックスアウトが出来ていないから」
とついつい捉えてしまいがちですが
「何故ボックスアウトが出来ないのか」
という原因をディフェンスシステムから考えて見ることを次の練習では意識してみてみようと思いました。
ノーミドルの特性、ノーベースの特性。
昨日参加したJBA公認C級コーチ養成講習会(新カリキュラムモデル講習会)では、栗原 祐太コーチの提案から両者の特性について考える機会に触れました。
昨日はディフェンスリバウンドの観点まで考えが及ばなかったのですが、この記事を読んでめくるめくように考えが深まりました。
こうして、ご一読頂ける皆様にとって、講習会や実際の指導現場で得たものに、この様にブログという点が何かの結び付きを作れたら、私も著者陣もとても幸せな気持ちです。
今日もコーチングが楽しみです(^^)
赤津
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