バスケットボールで磨かれる力
バスケットボールやスポーツをすることで、各競技の競技力や技術が身につきます。
また、チームスポーツに取り組むことで、協調性が身につきます。
また、クラブ活動やチーム、組織に所属することよって、自分の役割や立ち位置を学び、
礼儀や感謝を学び、人間性が磨かれていくと思います。
ただ、我々指導者は、「今までじぶんがこうしてきたから、これでいい」というような体験記憶や、
背景理論のない暗黙知で指導するのではなく、自分の指導や言葉に裏付けられる根拠や背景を持ちたいものですね。
では、バスケットボールでどのような力が磨かれていくのでしょうか。
色々な力や資質があると思いますが、 私は、
「非認知スキル」
を伸ばすことを考えて指導しております。
今日、これからの社会は
「正解が必ずしもひとつではない時代」
「何もかもが大きく変わり、これまでの常識が通用しない不確実な時代」
などと言われています。
またビジネスの世界でも、
変動性(Volatility)、
不確実性(Uncertainty)、
複雑性(Complexity)、
曖昧性(Ambiguity)
の頭文字をとった「VUCA」がキーワードになっています。
そして、教育界では、そういった時代を生き抜くために、
思考力や判断力、表現力や主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度が必要とされています。
(『自分で考えて決められる賢い子供 究極の育て方』より一部引用)
つまり、テストの点数などやIQなど数値化される「認知スキル」だけでなく、
数字で表しづらい「非認知スキル」が非常に重要になってくるのです。
(OECD(経済協力開発機構)などが提唱する「社会情動的スキル」、
WHO(世界保健機関)が「日常の様々な問題や要求に対し、
より建設的かつ効果的に対処するために必要な能力」と定義する「ライフスキル」と表現することもあります。)
そして、その非認知スキルを伸ばす最良の場所、最良の授業は、教室ではなく、
瞬時に状況が変わり、攻守の切り替えの早い、チームスポーツのバスケットボールだと思っております。
非認知スキルとは
「非認知スキル」とはどのような力でしょうか。
WHOが定義するライフスキルでは、10の項目に分類されています。
基本的には、数値化されにくい資質・能力すべてのことです。
私のチームでは、
「考えるサイクル」、
「コミュニケーション力」、
「感謝」
をバスケットを通じて学ぼうと伝えています。
具体的には、バスケットボールの練習や試合、活動を通じて、
基本的なPDCAを回しながら、自分を俯瞰しながら分析して成長する
「メタ認知能力」
や変化やあらゆる状況に対応する
「自己調整能力(セルフコントロール)」
といった資質・能力を伸ばすことを理念にしております。
「コミュニケーション3つの力」と「感謝」
また、「コミュニケーション力」は、3つの力、
「自ら働きかける力」、
「仲間と共感する力」、
「コミニケーションの場を作る力」
と定義し、多元的共生社会の中で活躍して行くことや仲間とともに成長することを大切にしています。
そして「感謝」は、感謝の気持ちが自己肯定感を育むという理論
(マーティン・セリグマンのポジティブ心理学のPERMAモデル)を聞いて、
今まで「人として・・・」など、道徳や倫理観という情操教育の観点でしか指導していなかったので、
人間力だけでなく、科学的にも「感謝」はいいんだよ。ということを伝えられるようになりました。
バスケットボールという1つの競技で、優勝したとか、ベスト4になったから成長したということではなく、
競技力や技術はもちろんですが、それに向かって仲間と努力して行く中で、
「メタ認知能力」が習慣化され、自分を分析できるようになった。
「自己調整能力」が高まって、いいパフォーマンスを発揮出来るようになった。
「ちゃんと頑張れば、成長出来るんだ」ということを感じてもらう、そういうチームにすることを心がけています。
ですので、全国大会や関東大会、東京で優勝する自信は、全くありません。
ただ、情熱さえあれば、6年間で必ず成長させます。というお話をさせてもらっています。
このようにバスケットボールを通して、学んだスキルはカテゴリが上がっても、
違う競技でも、ビジネスでも役立つスキルだと感じております。
そして、非認知スキルの向上は、認知スキルの向上にもつながり、
ジュニア期のバスケットボール選手として、学生として、変化に対応する力、自分で成長し続ける力を育みます。
今後もバスケットボールでライフスタイルをデザインしていけるよう、研鑽を積んでまいりたいと思います。
次回のコラムでは、メタ認知能力を伸ばす、「ふり返り」について考えていきたいと思います。
文:森 圭司
編集・校閲:赤津 誠一郎
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