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リバウンドドリル構築(3)【大学HCの育成コラムVol.3】

2019.4.18

こんにちは。京都大学女子バスケットボール部の方城素和です。

 

今回も記事に興味を持っていただきありがとうございます。

今回は15分程度でヘルプサイドのボックスアウトドリルについて書かせていただきます。

 

前々回ヘルプサイドのボックスアウトを練習すべき理由について考察し、前回はヘルプサイドのボックスアウトが起こるまでの状況について整理致しました。それらを踏まえて今回は実際のドリルについて考察してみたいと思います。

 

ヘルプサイドボックスアウトドリル

今回紹介するドリルは私たちのチームでは「ヘルプサイドボックスアウトドリル」と呼ぶ最もシンプルな状況を想定したドリルです。

 

図のような配置でシューターがスタートの合図をした後、シュートを打ちリバウンドを争うというのが基本設定となります。シンプルなドリルですが、シュートの打ち方やオフェンスがリバウンドを獲得した後にどうするか、時間設定などを工夫することで多くのバリエーションを持ち様々な要素を向上させることができると考えています。その一例については後半で紹介させて頂きます。

 

最初に質問させてください。

この練習を通じて選手にできるようになってほしいことは何だと思いますか?

 

その答えは「ボックスアウトをしてリバウンドをとる」ことです。

 

ですが「この練習を通じてボックスアウトができるようになって、リバウンドを取れるようになろうね!」と伝えられただけでは選手たちは困惑するでしょう。

 

どうすれば「ボックスアウトをしてリバウンドをとることができる」のかを伝え、選手たちがそれを実行した結果実際に「ボックスアウトをしてリバウンドをとる」ことができるようになることが練習なのではないかと私は考えています。

 

ボックスアウトにおいて「どうすれば」を言語化して伝えることはとても難しいことだと私は感じています。しかしながらコーチがトライしなければならないことであり、今回は私が重要だと考えていることを相手がシュートを打った瞬間から時系列順に紹介させて頂きます。

 

1. 相手の様子を見て、したいことを予測する

 

シュートが放たれたら即座にコンタクトに向かうように思われがちですが、相手選手との距離がある場合まず落ち着いて相手を見ることが重要であると考えています。

 

相手がリバウンドに入ってくるのか、セーフティに戻るのか、迷っているのか、リバウンドに入ってくるのであればミドル側からなのか、それともベース側からなのか、どのくらいの速さで来ているのか、そういった情報は重要でありますが得るのにそれほどの時間はかからないものです。

 

その情報から相手の動きを予測することでフェイクにかかったりカウンターで抜かれるリスクを軽減することができると考えています。

 

2. 自分からコンタクトにいく

相手の動きからコンタクトした方が良いと判断した場合、走ってコンタクトに向かいます。この時ボールの動きから目を切ることになりますが、相手を見て確実にコンタクトすることを優先した方が良いと思います。

 

理由としては

・コンタクトすることで自分が取れなくても味方が取ることができる可能性が高くなること

 

・シュートが放たれてから落ちてくるまでに約3秒の時間があると言われており、コンタクトしてからでもボールの行方を確認することができるということ

 

が挙げられます。

 

3. ボールを取りにいく

先ほど 2. で述べたことと矛盾するかもしれませんが、リバウンドの落下地点に対し相手よりも自分の方が近いところにいる、またはリバウンドに対して飛びついて相手よりも早く取れると判断した場合にはコンタクトが不十分でもボールを取りにいくべきだと考えています。

 

理由はコンタクトをするのはリバウンドをとるという「目的」のための「手段」だからです。

 

ここで難しいのはコンタクトを続けることで相手に取らせないことと、自分が取りにいくことの判断です。

 

コンタクトが不十分なまま取りに行った結果頭の上を跳ねて相手に取られてしまう。

 

こういったケースはよく見られます。こうならないためにはもっとコンタクトし続けるべきだったという反省が挙げられるでしょう。

 

一方でコンタクトし続けたものの自分の上に落ちてきたボールに反応する前に相手に上からチップされてしまう。

 

これもよく見られる現象です。これを避けるにはボールに対してより早く反応することが必要だと考えられます。

 

つまり状況状況によって選手が判断するしかなく、この判断基準を身につけるには反復して経験を重ねるのが効果的である、と私は現在考えています。この判断を身につけることがこの練習の大きな狙いとなります。

 

 

このような順序で考えると選手が自分が今何をすべきか、うまくいかなかった場合何を改善すべきか、といったことを考えやすくなると思います。

 

そしてこのドリルを行うときに私が指導上とても重要だと考えているポイントがあります。

それは「パーフェクトを求めすぎない」ということです。

 



パーフェクトを求めすぎない理由

リバウンドボールの行方を全て正確に予測できる人はいますでしょうか?

 

おそらくパーフェクトに行える人はいないと思います。

 

つまり完璧なボックスアウトをしていてもロングリバウンドになったりエアボールになったりした場合にはオフェンスリバウンドを許してしまうこともあるでしょう。

 

また先ほど述べたようにリバウンドにおける判断は非常に難しくパーフェクトを求めるには難易度が高すぎるのではないかと考えられます。

 

さらにもう1つ挙げられるのがディフェンスリバウンドを100%取れるのならばそれはオフェンスリバウンダーの技術が不足している、もしくは全力を出し尽くしていないということです。

 

オフェンスとディフェンスの力が均衡していてこそ良い練習ができますが、均衡しているのであればリバウンドの獲得結果もある程度均衡しているはずですよね。

 

100%取れるのならオフェンスリバウンドの練習をするか、選手が全力を出せるように状況設定を見直すべきでしょう。

 

以前あるコーチから教わったことですが、

 

「ディフェンスリバウンドであれば最初の目標は66%、つまり3本中2本を目指す。70%取れると間違いなく良いと言えるだろう。」

 

これが私のリバウンドに対する基本的な姿勢です。

 

もちろん1本1本絶対に取るという気持ちを選手が持つということは非常に重要です。

 

しかしながらコーチがそれだけに気を取られすぎて結果のみで評価してしまうとオフェンスがディフェンスの選手に遠慮してしまったり、

 

選手も肝心の判断やコンタクトができたかどうかではなく取れたかどうかだけしか気に留めなくなってしまい練習の狙いが変わってしまう恐れがあります。

 

バリエーションについて

そして少しですが、このドリルの条件設定の仕方によるバリエーションについて紹介したいと思います。

 

シュートの打ち方

 

①下投げでバックボードにぶつける

この方法だとほぼ確実にヘルプサイドにボールを落とせるという利点がありますが、一方でボールがリングに当たらないので単調なリバウンドになってしまうという欠点があります。マネージャーでもシューター役を務められるのも利点だ思います。同じ状況を作りやすく導入時に向いている方法です。

 

②選手が普通にシュートを打つ

この方法だとリバウンドがどこに飛んでいくかわからないのでよりライブに近いという利点がありますが、

 

シューター側のサイドにボールが跳ねたりシュートが入ってしまうなどライブではヘルプサイドの選手がリバウンドをとらないような状況になってしまう可能性があります。

 

またこの方法では距離を変えることによってリバウンドの位置を変えることができます。

 

つまりシューターの位置をリングから遠くすればするほどリバウンドボールも遠くに跳ねやすくすることができます。

 

これによっても難易度や想定する状況を調整することができます。

 

オフェンスがリバウンドを獲得した後にどうするか

 

①シューターにパスをしてもう一度行う

 

この方法ではすぐに気持ちを切り替えてもう一度ディフェンスが練習することができます。一方で実際の試合においてはリバウンドをとったオフェンスがすぐにパスをするということは起こりにくいためライブ感は低くなってしまいます。

 

この方法はリバウンド局面のみに集中できるという点で導入時に向いていると言えます。

 

②そのまま1on1を行う

 

試合中オフェンスがリバウンドをとった場合にはそのままシュートに来ることが多くみられると思います。

 

ディフェンスはリバウンドを取れなかった場合でもそのままシュートにいかれることは避けねばなりません。

 

その状況を想定して練習することでリバウンドを取れなかった後の切り替えを早くすることを学ぶことができます。

 

また1on1の後のリバウンドを強調することで相手にサードチャンスを与えないことの重要性も学ぶことができます。

 

欠点としてはロングリバウンドになった場合やシュートが入った場合にライブ感が低下してしまうということと、1on1の時間が発生することで練習時間中におけるリバウンドを練習する時間の割合が少なくなってしまうことが挙げられます。

 

時間設定

 

①本数で区切る

 

ディフェンスリバウンドを規定の本数獲得した場合に順次交代していくように設定すると、選手は前の人を参考にしたり待っている間に振り返りを行うことができます。

 

また1本交代にしておけば常にフレッシュな状態で行うことができます。

 

一方複数本にした場合ずっと取れなかった選手が出るとその選手のモチベーションが低下したり待ち時間に偏りが出るという欠点があります。

 

②時間で区切る

 

制限時間中はオフェンスとディフェンスを固定することで疲れてきてもリバウンドを争う状況を再現することができます。

 

しかしチームの都合によっては身体的な差があるマッチアップになってしまうこともあるかと思いますが、その場合に小さい選手が必要以上にタフな時間に感じてしまうかもしれません。

 

その他

 

ディフェンスリバウンドをとった後シューターにパスを戻すときにオフェンスが手を出してプレッシャーをかけてあげることでタフな状況でもパスアウトすることを練習することができます。

 

またボールキープが甘ければスティールしてあげることでボールキープの位置を確認する練習にもなります。

 

最後に

今回は私の考えるリバウンドの基本的なドリルの1つである「ヘルプサイドボックスアウトドリル」について紹介させて頂きました。

 

これまで考えて取り組んできたことをいざ文章に起こしてみると、思った以上の分量になり自分でも驚いています。

 

にも関わらず肝心の

 

「どうすれば」

 

については結局のところ経験を重ねることに行き着いてしまったことに力のなさを痛感しました。さらに考察していきたいと思います。

 

このドリルはディフェンスの練習であると同時にオフェンスの練習でもあると思います。

 

そちらについてもいずれ書かせていただきたいと思っています。

 

途中でも書きましたがお互いに切磋琢磨し合えるような環境を作ることが練習のレベルを上げることにつながると思いますので、そうなるための工夫についてもいずれ考察させて頂くつもりです。

 

今回紹介したドリルは1on1の状況を想定していますが、次回はこれにヘルプやローテーションの要素を加えた練習を紹介できればと思っています。

 

長文になってしまいましたが、今回も最後までお付き合い下さりありがとうございました。

 

文 : 方城素和

編集・校閲 : 赤津誠一郎

 

 



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著者情報

この記事の著者

京都大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ

方城 素和

Motokazu Hojo

出身地: 兵庫県神戸市

出身校:
兵庫県私立滝川高等学校
国立 京都大学 総合人間学部 認知情報学系
国立 京都大学大学院 人間・環境学研究科 共生人間学専攻 修士課程

資格:
中学校教員 第一種免許(数学)
  高等学校教員 第一種免許(数学)
中学校教員 専修免許(保健体育)
高等学校教員 専修免許(保健体育)

JBA公認B級コーチ

コーチ歴:
京都大学女子バスケットボール部 ヘッドコーチ(2014年10月〜現在)
京都市立紫野高等学校男子バスケットボール部 顧問(2014年4月〜2017年3月)
京都ハンナリーズバスケットボールスクール スクールコーチ(2013年4月〜2014年3月)
京都大学女子バスケットボール部 学生コーチ(2012年10月〜2013年8月)
京都大学男子バスケットボール部 学生コーチ(2011年10月〜2012年9月)

私がコーチとして憧れているValueは「一生懸命な選手が成長できる環境を創ることのできるコーチ」です。そのために「合理的」で「多様性のある」考え方のできるコーチになりたいと考えています。

私は選手としては何も残すことができませんでした。それが悔しくて、どうやったらより良い選手になれるのか知りたくて、そしてその方法を未来のある選手たちに伝えたくて、コーチを目指しました。その過程でたくさんの体育館で見学させて頂き、多くのコーチと出会うことができ、素晴らしい経験をさせて頂きました。

未だ本物のコーチを目指す道半ばの私ですが、このブログがそうやって積み重ねることができたValueをすこしでも多くの選手・コーチに伝えられるきっかけとなれば幸いです。

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