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リバウンドドリル構築(4)【大学HCの育成コラムVol.4】

2019.5.12

こんにちは。京都大学女子バスケットボール部の方城素和です。

今回も記事に興味を持って頂きありがとうございます。

 

前回の最後に「次回はこれにヘルプやローテーションの要素を加えた練習を」と書きましたが、

あれから学ぶ機会が多くありましたのでその経験を基にして、今回は12分程度リバウンドの練習におけるメンタルの持ち方について考えてみたいと思います。

 

練習に必要な雰囲気とは

前回ヘルプサイドのボックスアウトドリルにおいて重要な考え方として「パーフェクトを求めすぎない」ということを紹介させて頂きました。

 

その理由として

・リバウンドにおける判断は非常に難しくパーフェクトを求めるには難易度が高すぎる

・ディフェンスリバウンドを100%取れるのならばそれはオフェンスリバウンダーの技術が不足している、もしくは全力を出し尽くしていない

ということを挙げさせていただきましたが、もっと根本的な理由に気づかされましたので紹介致します。

 

それは

「ポジティブな雰囲気によって選手はチャレンジに積極的になる」

ということです。

 

この考え方が「パーフェクトを求めすぎない」こととどう繋がるか説明させて頂きます。

 

パーフェクトであることが素晴らしいという考え方に基づいた場合、選手に対する評価はどうやって行いますか?

 

おそらく減点法になると思います。減点法が良くないというわけではありませんが、減点法では積極的なチャレンジによる失敗は低い評価になってしまいます。

 

声かけも

 

「それだけアウトできたたのになんで取れないの。」

 

とか

 

「アウトはいいけどルーズ追わないといけないよ。」

 

とミスを指摘する方向に向かいがちになってしまいます。

 

一方加点法ではどうでしょうか?

 

加点法では積極的なチャレンジによる失敗に対して最高点はつかないかもしれませんが、ある程度の評価をすることができます。

 

「ボールは取れなかったけど、アウトはパーフェクトだったよ。」

 

とか

 

「そうやってルーズを追うことは素晴らしいよ。」

 

と良かったところを認めやすい声かけになると思います。

 

ではどちらの方が選手は次の練習で積極的にチャレンジするでしょうか?

 

積極的にチャレンジすることが全てではありませんが、積極的な気持ちを持つことがリバウンドの練習において重要であることは「Next play」という考え方で説明することができます。

 




リバウンドドリルにおける「Next play」

Next playとは文字どおり次のプレーです。日本トップクラスのあるコーチはバスケットボールで最も大切なプレーはNext playである。と言われていました。

 

ではディフェンスリバウンドにおけるNext playとは何でしょうか?

 

ディフェンスリバウンドを取った場合Next playはパスアウトや最近ではドリブルプッシュなどもあるようですが、これについては早く判断することが求められます。

 

判断が遅れるとブレイクに繋がらないだけでなく、相手選手に囲まれてヘルドボールやターンオーバー、8秒オーバータイムなどオフェンスの機会を失ってしまうことにも繋がってしまいます。

 

ディフェンスリバウンドを取れなかった場合、相手選手に良いポジションでボールを持たれているわけですからNext playはシュートを防ぐためにディフェンスすることになると思います。判断が遅くなると相手の簡単なセカンドショットを許してしまいます。

 

つまり当然ですが、ディフェンスリバウンドの結果に関わらずNext playが存在し素早くそれを実行することが求められます。

 

ということはディフェンスリバウンドが取れなかったとしても反省している暇はないのです。積極的にNext playに取り組んでほしいのです。

 

そう考えるとリバウンドの練習においても積極的なマインドを持つことは重要であることが理解して頂けるかと思います。

 

一方で減点法で評価していると

 

「ミスをしてしまった」

 

ことについて一瞬反省する習慣がついてしまうように感じます。

 

そうするとNext playに取り組むのが一瞬遅れてしまうのも必然的な習慣となってしまうのではないでしょうか。

 

 

 

「一敗一勝」という考え方

積極的にNext playに取り組むマインドを養う方法として、前回紹介したヘルプサイドボックスアウトドリルのバリエーションとしてオフェンスリバウンドを取った後にそのまま1on1をすることが有効であると感じています。

 

1on1をする場合ディフェンスはリバウンドを取れなかった上にオフェンスにシュートを決められてしまうと「二敗」してしまうことになります。しかし次のオフェンスのシュートを防ぎきったり次のシュートに対するリバウンドを獲得することができれば「一敗一勝」となります。

 

どちらの方が良い行動かは言うまでもありません。

 

ですがディフェンスリバウンドの練習でオフェンスリバウンドを取られたところで終わってしまうと「一敗」で終わってしまいます。また次のシュートに対するリバウンドを獲得して「一敗一勝」になったとしても取られたことを指摘するばかりだと「一敗一勝」は評価されない行動だと認識されてしまうでしょう。

 

練習とは良い行動を強化し習慣化することが重要ですから、試合でとって欲しい行動があればそれを練習で評価して強化していく必要があると思います。

 

「一敗一勝」は決してベストな結果ではありませんが、試合でとって欲しい結果だと考えるのであれば練習から一定の評価をしてあげるべきでしょう。

 

「できていないこと」と「していないこと」の違い

ここまでお読み頂くと「一敗一勝」を評価し続けるとそもそも「一敗」しないようにすることができないだろうと思われる方がおられると思います。

 

もちろん「一敗」したことの評価・修正はしなければなりません。

 

ここでは「一敗」についても加点法で捉えられるにはどうすれば良いか少しだけ考察してみたいと思います。

 

私が最も重要だと考えている評価基準は「できていないから失敗した」のか「していないから失敗した」のかということです。

 

簡単な例を挙げると「コンタクトできたものの角度が悪く中に入られてしまった」は「できていない」で、

 

「コンタクトの意識が甘くボールを見上げたままでいてしまった」は「していない」です。

 

「していない」についてはネガティブな空気を覚悟して厳しく指摘することも時には必要かもしれません。

 

しかし「できていない」ことは単に指摘するだけでは選手は落ち込むだけでしょう。

 

最終にできていないことがあったとしてもその過程でできたことがあると思います。

 

今回の例では「コンタクトはできた→でも角度が悪かった」ということですからまずコンタクトできたことを評価してあげるのが良いのではないでしょうか。

 

その後角度が悪かったことをどう修正するか伝えると選手もポジティブな気持ちで次の修正に向かえるのではないかと思います。

 

「できていない」は失敗ではなく次の成功のためのステップなのです。

 

「できていない」と「していない」を見分けること、「できていない」の中から「できた」を見つけることを通してポジティブな雰囲気を創り出すことはコーチの重要な役割の1つなのだと思います。

 




最後に

今回はリバウンドを中心に練習全体におけるメンタル面についての考え方を紹介させて頂きました。

 

「ポジティブな雰囲気によって選手はチャレンジに積極的になる」「Next play」「一敗一勝」

 

と言ったキーワードは素晴らしいコーチの方々から教わったものです。

 

特に今回はValueWorksの赤津代表がスキルコーチを務める実践学園中学校男子バスケットボール部Jr. Griffinsの練習を見学させて頂き、そこで学んだことをどうやったらリバウンドにも応用できるかということを考えて執筆させて頂きました。

 

私自身がチームに対してポジティブな雰囲気をどれほど創れているだろうかと考えてみるとネガティブな発言や行動が多く頭に浮かんでしまいました。

 

選手に求めるのならばまず自分から、ということで今回具体的にどう振る舞えば良いかを考察してみました。これから練習で実践していき、さらに良い考察を加えていきたいと思います。

 

次回は前回予告していました、ヘルプサイドボックスアウトドリルにヘルプやローテーションの要素を加えた練習を紹介できればと思っています。

 

今回も長い文章になりましたが、最後までお付き合い下さりありがとうございました。

 

 

文 : 方城 素和

編集・校閲 : 赤津 誠一郎

 



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