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リバウンドドリル構築(7)【大学HCの育成コラムVol.8】

2019.10.31

こんにちは。京都大学女子バスケットボール部の方城素和です。

 

今回も記事に興味を持って頂きありがとうございます。

 

久しぶりの更新になってしまいましたが今回も頑張って執筆致しました。

 

それでは、前回に引き続き昨シーズンのBリーグスタッツを基にリバウンドについて分析してみたいと思います。

 

7分程度でBリーグのプレーオフにおけるチームごとのDRのスタッツから読み取れることを見ていきたいと思います。

 

DR%から試合を見る

今回は各試合について両チームのDR%というアドバンストスタッツを算出したいと思います。

私たちはDR%を以下の式で算出しています。

 

DR% = 自チームのDR数÷(自チームのDR数+相手チームのOR数)×100

 

基本的にはシュートが外れた場合には必ずリバウンドが記録されているものとします。(アウトオブバウンズやルーズボールになった場合はチームリバウンドとして記録するものとする。)

 

つまりDRを獲得する機会があった回数のうちどの程度実際に獲得できたかを示す指標になります。

これをプレーオフの全試合について計算したものが下の図になります。

 

75%以上の場合緑に、65%以下の場合赤で塗りつぶされています。

結果をまとめると以下のようになります。

 

この結果から

 

「DR%が高いから勝てるわけではないし、勝つチームが必ずしも高いDR%を残しているわけではない。しかしDR%が低いと敗戦する可能性は上がる。」

 

ということが言えるかと思います。もちろんたった15試合の結果ですので統計的に確かではありません。しかしながらコーチの感覚としては理解できるものではないでしょうか。

 

この表についてもう少し詳しく考察していこうと思います。

いろいろと見ていきたいことはありますが、今回はS. Final2のGame1・Game2(千葉ジェッツ対栃木ブレックス)について比較しながら取り上げたいと思います。

 

同じ対戦でも数字が大きく変化した理由

Game1ではDR%が両チームとも75%以上の一方で、Game2では65%を切っています。

この2ゲームにはどのような関係があるでしょうか?

 

もう少しスタッツを詳しく見ていきたいと思います。 

 

 

Game1では両チームがDRを高い割合で取れた反面、全体の得点は少し低めになっています(レギュラーシーズンのB1平均得点は76.8点)。

 

逆にGame2では両チームとも得点を10点以上伸ばしている一方で、DR%が下がっています。特にBrexはDR%を30%下げていますが、自分たちの得点は16点上昇しています。この差はどうやって生まれたのでしょうか?

 

出場選手を見てみるとJetsは2試合とも同じメンバーですが、BrexはGame1とGame2で変更がありました。Game1は#22ライアン・ロシター選手が出場していますが、Game2は怪我のため#12アンドリュー・ネイミック選手に代わっています。ここが1つのキーポイントだと思われます。

 

レギュラーシーズンでは58試合に出場し1試合平均19.8点 3.2OR 8.1DRをあげているロシター選手が欠場し、途中入団のネイミック選手を起用するということでおそらくBrexのゲームプランは変更を余儀なくされたと思います。

その結果意図的かどうかはわかりませんが、上で見たような差が生まれたのだと思います。

 

どのようなゲームプランで臨まれたのかなどは推測でしかありませんので、ここでは割愛しますが、点数だけで見ればGame2の方が僅差のゲームとなっています。Brexのゲームプランは成功と言ってもいいのではないでしょうか。

 

またJetsもそれに対応してDR%は下がったものの、OR%や得点を伸ばし勝ち切れた要因にはコーチの対応があったのだと思います。

 

もちろん両チームのコーチ陣は「DR%が高いから勝てるわけではないし、勝つチームが必ずしも高いDR%を残しているわけではない。しかしDR%が低いと敗戦する可能性は上がる。」ということは理解された上で、それでも勝つためにこのようなゲームプランを選択されたのではないかと思います。

 

この試合を踏まえコーチが準備しておくべきこと

上の試合ではBrex・Jetsが2試合でチームや相手の状況に対応して戦術を変化させたであろうことを推察しました。もちろん限られた情報に基づいた私の推測ですので、本当にそうだったのかは定かではありませんが。

 

これは日本のトップであるBリーグの試合での実例ですが、どのカテゴリーにおいても主力選手が怪我をしたり試合に来られないといったことは起こりえることだと思います。当然その時には他の選手を使って対応することになりますが、いつもと違う状態になることは仕方のないことだと思います。

 

その時にどこは変化させたり妥協できる部分なのか、逆にどこはメンバーが変わったとしても変えてはいけない部分なのかをはっきりさせることもコーチの重要な仕事だと思います。

 

おそらくBrex・Jetsの両チームにもリバウンド以外の何かでチームとしてこだわっているものがあって、それは変えていないと思います。それが何かの分析はここでは割愛いたしますが。

 

もちろんそれはそうなった時にいきなりすることではなく、チーム構築の段階から選手が理解できるように積み上げていくものだと思います。どんなメンバーでも実行してほしいコンセプトをはっきりさせることでチームはまとまっていくものだと思いますので、コンセプトをはっきりさせることはコーチの最も基本的でかつ重要な仕事だと思います。

 

その仕事が適切にできているかどうかを確認する手段の1つは控え選手に「試合に出たら誰でもこれだけはやってほしいとコーチが期待していることは何だと思う?」と聞いてみることだと思います。何人かに聞いてそれが一致していれば、素晴らしいコーチだといえると思います。

 

最後に

前回に引き続きDRのスタッツ分析に挑戦してみましたが、できるだけ多くの情報を集めたものの、やはり推測が多くなってしまいました。

 

例に出させて頂いたBrexとJetsの試合も実際に映像を見ることが出来ておらず、純粋にスタッツだけからの限られた情報のみの推測ですので必ずしも正しいとは言えませんし、他にも色々な解釈・見方ができると思います。

 

ですのであくまで1つの解釈として受け取っていただければと思います。

 

ですが、単に

 

「Bリーグだからいい選手が揃っているからそんな対応ができるんだ。」

 

と捉えてしまうのではなく、限られた選手層の中でも自分たちで対応できることを増やしておくこと、またチーム全体で大切にするコンセプトを共有しておくことはどのカテゴリーの選手にとっても試合に臨む・チームを構築する上で必ずプラスになる考え方だと思います。

 

ぜひ今一度自分たちのチームでコンセプトの共有ができているか、振り返ってみて明日からの練習の質の向上につなげていただければと思います。

 

今回も最後までお付き合いくださり本当にありがとうございました。

 

文章:方城 素和

編集・校閲:赤津 誠一郎



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著者情報

この記事の著者

京都大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ

方城 素和

Motokazu Hojo

出身地: 兵庫県神戸市

出身校:
兵庫県私立滝川高等学校
国立 京都大学 総合人間学部 認知情報学系
国立 京都大学大学院 人間・環境学研究科 共生人間学専攻 修士課程

資格:
中学校教員 第一種免許(数学)
  高等学校教員 第一種免許(数学)
中学校教員 専修免許(保健体育)
高等学校教員 専修免許(保健体育)

JBA公認B級コーチ

コーチ歴:
京都大学女子バスケットボール部 ヘッドコーチ(2014年10月〜現在)
京都市立紫野高等学校男子バスケットボール部 顧問(2014年4月〜2017年3月)
京都ハンナリーズバスケットボールスクール スクールコーチ(2013年4月〜2014年3月)
京都大学女子バスケットボール部 学生コーチ(2012年10月〜2013年8月)
京都大学男子バスケットボール部 学生コーチ(2011年10月〜2012年9月)

私がコーチとして憧れているValueは「一生懸命な選手が成長できる環境を創ることのできるコーチ」です。そのために「合理的」で「多様性のある」考え方のできるコーチになりたいと考えています。

私は選手としては何も残すことができませんでした。それが悔しくて、どうやったらより良い選手になれるのか知りたくて、そしてその方法を未来のある選手たちに伝えたくて、コーチを目指しました。その過程でたくさんの体育館で見学させて頂き、多くのコーチと出会うことができ、素晴らしい経験をさせて頂きました。

未だ本物のコーチを目指す道半ばの私ですが、このブログがそうやって積み重ねることができたValueをすこしでも多くの選手・コーチに伝えられるきっかけとなれば幸いです。

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