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リバウンドドリル構築(5)【大学HCの育成コラムVol.5】

2019.6.4

こんにちは。京都大学女子バスケットボール部の方城素和です。

 

今回も記事に興味を持って頂きありがとうございます。

 

今回は前回の最後に予告したように10分程度でヘルプサイドボックスアウトドリルにヘルプやローテーションの要素を加えた練習を紹介させて頂きたいと思います。

 

今回紹介するドリルは「ヘルプサイド2on2+1on1」です。

 

前々回に紹介したヘルプボックスアウトドリルの発展形になります。

 

「ヘルプサイド2on2+1on1」の配置とバリエーション

 

配置は上図のようになります。(オフェンスはローポストとウイングでも良いと思います。)

シューターの動きとそれに対するディフェンスの対応によって様々なバリエーションを作ることができます。

 

シューターの動きとしては次の3つが考えられます。

① キャッチからシュートを打つ

② ドライブからシュートを打つ

③ ライブ

 

これらについてもう少し詳しく見ていきましょう。

 

①シューターがキャッチからシュートを打つ

 

ディフェンスはシューターにパスをし、クローズアウトしてシュートチェックにいきます。シューターはキャッチ&ショットをすることでよりライブに近いシュートを打つことになります。

 

この場合ディフェンスはシューターに対するボックスアウト+ヘルプサイドのボックスアウト×2の状況で練習することができます。

 

しかしながらヘルプサイドのプレーヤーにシュート以前の判断の要素が含まれていないためライブ感は少なめです。

 

導入としておススメです。

 

②シューターがドライブからシュートを打つ

 

クローズアウトに対してシューターがシュートフェイクからドライブしてジャンプシュートを選択します。

 

ミドルドライブorベースラインドライブの判断はあらかじめ決めることもできますし、シューターの判断に任せることもできます。

 

この場合ボールマンのディフェンスはダミーで抜かれて横をついていくという約束で良いと思いますが、熟達してきたらライブの1on1にしてみても良いと思います。

 

この場合ディフェンスの対応は次の2通りが考えられます。

 

A.必ずヘルプに出る+カバーダウンする+ローテーションすることが決まっている

 

この場合はチームディフェンスの中でマークマンが変わった状況でのボックスアウトを練習することができます。しかし動きがあらかじめ決まっているため判断力を養う部分は少なくなります。

 

B.状況によって判断する

 

この場合はヘルプのディフェンスがヘルプに出るかどうかによってもう1人のヘルプサイドのディフェンスはカバーダウンするかどうかを選択しなければならず、さらにその上でローテーションするのかそれとも自分のマークマンに戻ってボックスアウトをするのかといった高度な状況判断を求められます。

 

また複数人で状況判断を統一する必要があるためコミュニケーション能力も養われるでしょう。

 

一方でボックスアウトをする状況までたどり着けない可能性もありますので、ある程度選手が成長している必要があるでしょう。

 

オフェンスはあえてドリブルをゆっくりしてヘルプが必要ない状況を演出してあげたり、ヘルプがいなければレイアップにいくなど変化をつけることが求められます。

 

③ライブ

 

③ライブと②シューターがドライブからシュートを打つの違いはオフェンスの選択肢にパスがあるかどうかです。

 

すなわちカバーダウンができていなければゴール下への合わせが起きたり、ヘルプサイドにパスが飛んでシュートを打たれた場合、もともとボールマンのディフェンスだったプレーヤーがヘルプサイド側に位置してボックスアウトをするといった状況が生まれます。

 

またシューターはキャッチ&ショットとドライブからジャンプシュートを打つことの選択も可能です。

 

そうするとよりヘルプに出るかどうか、ローテーションするかどうかといったディフェンスの判断が高いレベルで求められる状況になります。

 

一方でヘルプサイドのオフェンスはミドルラインを越えてボールサイドに移動しない、シューターはまず自分のシュートやドライブを狙うこととしていきなりスキップパスは原則なし(結果的にタフショットになっても構わない)等オフェンスの選択肢を少し制限することで練習の目的としているヘルプサイドのボックスアウトが生まれやすい状況を維持することができると考えられます。

 

基本的なルール設定・バリエーション等は以上になります。

 

ではここで皆様に質問です。

 

このドリルの目的を守りつつ実戦で想定されるような様々な状況を作り出し練習強度を高めることができるのは誰だと思いますか?

 




「良いコーチであれ」

練習メニューを決めるのはコーチです。しかし実際に練習を行うのは選手です。

 

そして今回の目的であるヘルプサイドのボックスアウトが生まれるためにはシューターが1on1を狙うことやヘルプサイドのオフェンスが良いタイミングでリバウンドに参加することが必要です。

 

つまりオフェンスが意図を持って行動することで練習で目的とする状況を創りあげることができるのです。

 

またドライブした後にヘルプが不十分であればそのままレイアップを狙う、逆サイドのカバーダウンやローテーションが不十分であれば大きなキャッチボイスを出しキックアウトからオープンショットを打つ、というようにディフェンスのスキをつこうとすることで、ディフェンスは緊張感を高く保つことができるでしょう。

 

つまり選手がコート内でオフェンスが練習の意図を理解し、練習したい状況が生まれるようなプレーの選択をする「良いコーチ」となることで良い練習ができるのです。

 

この「良いコーチであれ」という考え方はある育成年代のコーチの方から教えてもらいました。

 

それを自分なりに解釈して今シーズンにおける京都大学女子バスケットボール部のチーム創りの土台としています。

 

今回はこのドリルの中で紹介しましたが、いきなりこの考え方を導入することは難しいと思います。

 

実際にはパスドリルやダミーを入れたドリルなどから少しずつ浸透させていくことになると思います。

 

この考え方を浸透させるためにはまずコーチがはっきりとした意図を選手に伝える必要があります。

 

前提としてコーチが選手に

 

「何を練習したくて、どういう状況を想定しているのか」

 

「どういった動きが出れば正解なのか」

 

をきちんと言葉にして伝えられることが大切です。

 

その上で私たちのチームで行っている方法はシンプルですが、

 

「ディフェンスがこういうことをできるようになって欲しいんだけど、そのためにオフェンスはどうしてあげるといいかな?」

 

という問いかけを投げかけることや、

 

「良いコーチ」だと思えるオフェンスの動きが出た時に

 

「いまのは試合で想定されるオフェンスだから止めれるようになりたいよね。ということはいまのオフェンスは良いコーチだよね。」

 

と伝えることです。

 

全ての練習で取り入れてられている訳ではありませんが、少しずつでも考える機会を設けることで選手が「良いコーチ」だと思える行動が増えてきているように感じます。

 

小・中学生であればいきなりオフェンスの望ましい行動を質問するよりも、

 

「ディフェンスはどうオフェンスされた時に守るのが難しい?」→「じゃオフェンスはそれを狙ってあげると、ディフェンスのいい練習ができるよね。」

 

といったディフェンス目線から考え始めてみるのも効果的かと思います。

 

また望ましいオフェンスが起こりそれに対して良いディフェンスが起きた場合、ディフェンスを褒めることもそうですがオフェンスも褒めてあげることが重要だと思います。

 

例えばオフェンスが一生懸命ボールに絡んでルーズボールの結果ディフェンスがボールを確保した場合、「ナイスルーズ!」の後に「オフェンスもナイスファイトだよ!」という一言があればオフェンスも最後までルーズボールを頑張ろうという空気が生まれ、その空気が練習のクオリティを高めていくのではないでしょうか。

 

最後に

今回は複数人のリバウンドドリルについて紹介させて頂きました。

 

設定自体は単純なものだと思いますが、段階の設定や「良いコーチである」という考え方等がドリルの構築に役立てば幸いです。

 

複数人のリバウンドドリルでは状況設定や意図した状況を実際に生み出すことが1on1のドリルと比べ、格段に難しくなると思います。

 

その中でコーチが意図する状況を創り出すのにはコート上の「良いコーチ」の存在が非常に重要だと思い今回紹介させて頂きました。

 

私たちのチームの選手は大学生であり理解力のある選手たちだと思います。

 

しかしながら入部した当初から「良いコーチ」であったわけではありません。

 

良いコーチとは何かを伝えたり考えるきっかけをつくり、それに対するフィードバックを続けることで少しずつ練習全体のクオリティが上がってきたように感じます。

 

ぜひ「京都大学の学生は特別だから」と考えずに全てのカテゴリー・レベルで「良いコーチ」を創れるようにチャレンジしていただきたいと思います。

 

今回はドリルの内容とともに「良いコーチ」という考え方を紹介する形になりました。最近はyoutubeで調べればドリル自体はいくらでも出てくる環境ですので、ドリルのルールを説明するよりもドリルの目的を達成するための工夫について書かせて頂くことも重要かと感じ、今回は途中から考え方に寄った記事になりました。この辺りについてもご意見・ご感想等頂けると大変嬉しいです。

 

次回はディフェンスリバウンドは誰が取るべきかということについてスタッツ分析などを踏まえて考察してみたいと考えています。

 

今回も長い文章になりましたが、最後までお付き合い下さりありがとうございました。

 

 

 

文 : 方城 素和

編集・校閲 : 赤津 誠一郎

 

 



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著者情報

この記事の著者

京都大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ

方城 素和

Motokazu Hojo

出身地: 兵庫県神戸市

出身校:
兵庫県私立滝川高等学校
国立 京都大学 総合人間学部 認知情報学系
国立 京都大学大学院 人間・環境学研究科 共生人間学専攻 修士課程

資格:
中学校教員 第一種免許(数学)
  高等学校教員 第一種免許(数学)
中学校教員 専修免許(保健体育)
高等学校教員 専修免許(保健体育)

JBA公認B級コーチ

コーチ歴:
京都大学女子バスケットボール部 ヘッドコーチ(2014年10月〜現在)
京都市立紫野高等学校男子バスケットボール部 顧問(2014年4月〜2017年3月)
京都ハンナリーズバスケットボールスクール スクールコーチ(2013年4月〜2014年3月)
京都大学女子バスケットボール部 学生コーチ(2012年10月〜2013年8月)
京都大学男子バスケットボール部 学生コーチ(2011年10月〜2012年9月)

私がコーチとして憧れているValueは「一生懸命な選手が成長できる環境を創ることのできるコーチ」です。そのために「合理的」で「多様性のある」考え方のできるコーチになりたいと考えています。

私は選手としては何も残すことができませんでした。それが悔しくて、どうやったらより良い選手になれるのか知りたくて、そしてその方法を未来のある選手たちに伝えたくて、コーチを目指しました。その過程でたくさんの体育館で見学させて頂き、多くのコーチと出会うことができ、素晴らしい経験をさせて頂きました。

未だ本物のコーチを目指す道半ばの私ですが、このブログがそうやって積み重ねることができたValueをすこしでも多くの選手・コーチに伝えられるきっかけとなれば幸いです。

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