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リバウンドドリル構築(6)【大学HCの育成コラムVol.6】

2019.7.17

こんにちは。京都大学女子バスケットボール部の方城素和です。

今回も記事に興味を持って頂きありがとうございます。

 

今回は前回の最後に予告したように7分程度でDR(ディフェンスリバウンド)は誰が取っているのかということについてスタッツ分析などを踏まえて考察してみたいとと思います。

 

Bリーグのシーズンが終了して移籍やトライアウトがありますので、今回はBリーグの個人スタッツから読み取れることを見てみたいと思います。

 

DRPGとその順位

今回はBリーグ公式サイトに記載されているスタッツを利用してDRPG(Defensive Rebound per Game, 1試合当たりのディフェンスリバウンド獲得数)という値を計算してみました。単純にDR数を出場試合数で割ったもので、下の表では右から2列目に表示されています。これにより途中加入した外国人選手や怪我をして長期休場した選手なども平等に評価することができます。

 

上の表はDRPGで並び替えたものですが、皆様の予想通り外国籍選手が上位を占めています。

SFのジョシュ・チルドルス選手もいますが、多くは主にインサイドでプレーする選手です。

 

基本的にリングに近いところに位置するインサイドの選手がリバウンドを多く獲得するのは自然なことだと考えられます。

 

ではアウトサイドの選手、なかでもPGの選手に絞って数値を見てみるとどうでしょうか?

 

こうしてみるとTOP10に新潟アルビレックスBBの選手が複数入っているのが目をひくかと思います。

これについてもう少し検討してみたいと思います。

 

五十嵐圭選手 ORPG 0.3 DRPG 2.7 平均出場時間 31:14

柏木真介選手 ORPG 0.5 DRPG 2.5 平均出場時間 27:39

渡辺竜之佑選手 ORPG 0.5 DRPG 2.5 平均出場時間 11:44

 

この3名の選手で

ORPG 1.3 DRPG 7.7 平均出場時間 70:37

ですから毎試合PGが7本から8本DRを獲得している計算になります。

 

実は下の表のようにチームで見ても新潟はリーグで最もDRPGの高いチームですが、これにはPGが大きく貢献していると言えると思います。

 

ではPGがDRをとるとどんな利点があるでしょうか?

 

PGがDRをとることで得られるもの

私はPGがDRをとることでインサイドプレーヤーの負担を軽減できると考えています。

 

リバウンドを取る過程は大きく「ボックスアウト→ジャンプしたりボールを追いかけてボールキャッチ→(ドリブルでパスが出せる状態を作る→)ガードへのパスアウト」に分けられると思います。

最近はリバウンドを取ってそのままドリブルで攻めるプレーも出てきていますが、周りに相手選手がいることを想定するとパスアウトすることまでをひとつながりのプレーと捉えても良いかと思います。

 

そうするとインサイドの選手はコンタクト→ジャンプorダッシュ→(ドリブル→)パスと強度の高い動きを連続して行うことになります。その回数が多くなればなるほど肉体的負担も大きくなります。

 

一方ガードの選手がリバウンドを取った場合インサイドの選手の負担は最初のコンタクトのみになります。つまりインサイドの選手のジャンプやダッシュ・パスの負担を少しでも削減できることになります。

 

一般的に育成年代ではサイズのある選手は中心的役割を担い出場時間も長くなりがちだと思います。またインサイドプレーヤーの人数が少なく交代が難しい場合もよくあるかと思います。つまり育成年代のチームにとってインサイドの選手の負担を減らすことはチームとしての重要な課題のひとつだと言えます。

 

もちろんガードの選手の負担はその分増加してしまいますが、インサイドと比較するとボックスアウトによるコンタクトの強度や頻度はもともと小さめかと思います。またガードの選手の方がサイズ面などから考えると交代によるローテーションがしやすいのではないでしょうか。

 

インサイドとアウトサイドが負担をシェアすることで生まれるもの

ここで新潟のスタッツをもう少し見てみます。

 

もう一度最初の全選手のスタッツを見てもらうと、7番目にダバンテ・ガードナー選手がランクインしています。

 

これではインサイドの負担を軽減できていないと思われるかもしれません。

そこで上位10選手についてもう少し詳しく見ていきましょう。

 

右側2列のDR P/T (選手個人のDR数/チーム全体のDR数を%表示したもの)DRPG P/T (選手個人のDRPG数/チーム全体のDRPG数を%表示したもの) は私が今回独自に算出したもので、チーム全体における選手のDRの獲得比率を示すものです。

 

つまりこの2つの数字が高ければ高いほどその選手がDRにおける中心選手であることを示しています。

実はDRPG P/T がガードナー選手はTOP10選手のうちでもっとも小さかったのです。裏を返せば新潟はガードナー選手に頼りすぎずチーム全体でDRを獲得しているということができるのではないでしょうか。

 

特にみなさんご存知だと思いますがガードナー選手は得点王を獲得するなどオフェンス面でも貢献が期待され出場時間数でもリーグ2位を記録する選手です。もちろんサイズや能力も高いのでDRの本数も期待できると思います。しかしながらチーム全体のバランスや40分のゲーム運びを考えた時にチーム全体でDRをシェアすることで、ガードナー選手はディフェンス面での負担が削減されよりオフェンスに集中することができていたのではないでしょうか。

 

またPGがDRをとることでガードへのパスアウトを省略することができると上で述べましたが、これによりアーリーブレイクにつながりやすくなることが考えられます。

 

これは数字による分析ではなく私の過去の印象でしかないのですが新潟のPGの五十嵐選手、柏木選手はスピードがあり早い展開を好む選手だというイメージがあります。両選手は自ら積極的にDRを取りにいくことで素早くトランジションオフェンスにつなげ自分たちのリズムを作り出しているのかもしれません。更に言えばトランジションオフェンスをつくることでガードナー選手以外の選手が得点を狙い、ガードナー選手を休ませる機会が増えることにつながっているのかもしれません。

 

最後に

今回はDRのスタッツ分析に挑戦してみましたが、思ったより公開されている情報が少なく私の推測が多く入ってしまいました。もちろんこの考えが正しいかどうかはわかりませんし、他にもいろいろな見方ができると思います。

 

しかしながらスタッツをただ見るだけではなく「どうしてこのスタッツになったのだろうか?」と考えることはたとえ正解やそのチームの本来の意図と異なっていたとしても意味のあることだと思います。

 

決してスタッツは誰がいい選手かを見るためだけにあるわけではありません。スタッツから相手チームがどういう意図を持っているか推察したり、自分たちの意図がコート上で表現できているかどうかを確認したりすることはコーチの大切な仕事の1つなのです。

 

スタッツから意図を推察する能力を高めることは必ずコーチとしての成長につながると思いますので、皆様も是非トライして頂ければと思います。この記事がそのきっかけとなれば、また今回私が算出したDRPG・DR P/Tのようなオリジナルの指標などがその一助となれば幸いです。

 

今回も最後までお付き合いくださりありがとうございました。

 

文 : 方城 素和

編集・校閲 : 赤津 誠一郎

 



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著者情報

この記事の著者

京都大学女子バスケットボール部ヘッドコーチ

方城 素和

Motokazu Hojo

出身地: 兵庫県神戸市

出身校:
兵庫県私立滝川高等学校
国立 京都大学 総合人間学部 認知情報学系
国立 京都大学大学院 人間・環境学研究科 共生人間学専攻 修士課程

資格:
中学校教員 第一種免許(数学)
  高等学校教員 第一種免許(数学)
中学校教員 専修免許(保健体育)
高等学校教員 専修免許(保健体育)

JBA公認B級コーチ

コーチ歴:
京都大学女子バスケットボール部 ヘッドコーチ(2014年10月〜現在)
京都市立紫野高等学校男子バスケットボール部 顧問(2014年4月〜2017年3月)
京都ハンナリーズバスケットボールスクール スクールコーチ(2013年4月〜2014年3月)
京都大学女子バスケットボール部 学生コーチ(2012年10月〜2013年8月)
京都大学男子バスケットボール部 学生コーチ(2011年10月〜2012年9月)

私がコーチとして憧れているValueは「一生懸命な選手が成長できる環境を創ることのできるコーチ」です。そのために「合理的」で「多様性のある」考え方のできるコーチになりたいと考えています。

私は選手としては何も残すことができませんでした。それが悔しくて、どうやったらより良い選手になれるのか知りたくて、そしてその方法を未来のある選手たちに伝えたくて、コーチを目指しました。その過程でたくさんの体育館で見学させて頂き、多くのコーチと出会うことができ、素晴らしい経験をさせて頂きました。

未だ本物のコーチを目指す道半ばの私ですが、このブログがそうやって積み重ねることができたValueをすこしでも多くの選手・コーチに伝えられるきっかけとなれば幸いです。

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