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リバウンドドリル構築(8)【大学HCの育成コラムVol.9】

2019.12.17

こんにちは。京都大学女子バスケットボール部の方城素和です。

 

今回も記事に興味を持って頂きありがとうございます。

前回に引き続き、久しぶりの更新になり申し訳ありません。

 

今回は少し見方を変えて、10分程度でルールブックをもとにボックスアウトに必要不可欠な要素であるコンタクトについて考察していきたいと思います。

 

リーガルなコンタクトとは

バスケットボールにおいてはボックスアウトに限らず様々な局面でコンタクトが発生します。数え切れないほどのコンタクトの中でリーガル・イリーガルという判定が下されるわけですが、その基準についてもう一度ルールブックを見直してみたいと思います。

 

第33条 コンタクト(体の触れ合い):基本概念 (Contact: General principles)

 

33-1 シリンダーの概念

プレーヤーがコート上で普通に立ったとき、そのプレーヤーが占めている位置とその真上の空間をシリンダー(筒)という。

シリンダーとは、以下の範囲が含まれる:

◦正面は手のひらの位置まで
◦背面は尻の位置まで
◦側面は腕と脚の外側の位置まで

 手や腕を前に伸ばしてもいいが、足の位置を超えてはならない。

 手を肘の位置で曲げてもいいが、前腕と手は挙げなくてはならない。

両足の間隔はプレーヤーの身長により決められる。 

 

(JBA OFFICIAL BASKETBALL RULES 2019 バスケットボール競技規則 PDF p.42 より転載)

 

以上のように記載されています。

図5については多くの方が目にされているものだと思います。

 

もう少し続けて紹介します。

 

33-2 バーティカリティ(真上の空間の概念)

ゲーム中全てのプレーヤーは、相手チームのプレーヤーが占めていない位置であれば、コート上のどのような位置でも占めることができる。

この概念は、コート上にプレーヤーが占めた位置の権利およびそのプレーヤーが真上にジャンプする権利も含まれる。

 

自分のシリンダーから外れた空間で、すでに自分のシリンダーを占めている相手チームのプレーヤーと触れ合いを起こしたときは、自分のシリンダーから外れているプレーヤーにその触れ合いの責任がある。

 

ディフェンスのプレーヤーが、自分のシリンダー内でジャンプしたり手や腕を上げていて触れ合いが起こっても、そのプレーヤーに触れ合いの責任はなく、罰則が科されることはない。

 

オフェンスのプレーヤーは、コート上にいるときでもジャンプをして空中にいるときでも、リーガルガーディングポジションを占めているディフェンスのプレーヤーと次のような触れ合いを起こしてはならない。

 

◦腕で相手チームのプレーヤーを払いのけたりして、自分に有利な空間をつくること

◦ショットの動作中やショットをした後に、脚や腕を広げて触れ合いを起こすこと

 

ここまでくると、どのようにコンタクトするべきかが見えてきます。

 

①「ゲーム中全てのプレーヤーは、相手チームのプレーヤーが占めていない位置であれば、コート上のどのような位置でも占めることができる。」

→早く動き出すと位置を占めることができる。

 

②「この概念は、コート上にプレーヤーが占めた位置の権利およびそのプレーヤーが真上にジャンプする権利も含まれる。」

→早くジャンプすると空中の空間を早く占めることができる。

 

③「ディフェンスのプレーヤーが、自分のシリンダー内でジャンプしたり手や腕を上げていて触れ合いが起こっても、そのプレーヤーに触れ合いの責任はなく、罰則が科されることはない。 」

→シリンダー内でなら基本的にコンタクトに関して無敵である。

 

また空中にいるプレーヤーについても次のような記載があります。

 

33-6 空中にいるプレーヤー

コート上でジャンプをしたプレーヤーには、元の位置に下りる権利がある。

コート上でジャンプをしたプレーヤーには、元の位置と違うところでも、ジャンプをした時点でジャンプをした位置と着地する位置の間に相手チームのプレーヤーが位置を占めていなかった場所に下りる権利がある。

ジャンプをしたプレーヤーが元の位置と違うところに下りた勢いで、すでに近くにリーガルガーディングポジションを占めていた相手チームのプレーヤーと触れ合いを起こしたときは、ジャンプをしたプレーヤーに触れ合いの責任がある。

 

相手チームのプレーヤーは、プレーヤーが空中にジャンプをした後からそのジャンプをしたプレーヤーの軌道に入ってはならない。

 

空中にいるプレーヤーの足元に入って触れ合いを起こすことは、通常はアンスポーツマンライクファウルであり、場合によってはディスクォリファイングファウルになる。

 

ここから次のことが言えるかと思います。

 

④「コート上でジャンプをしたプレーヤーには、元の位置に下りる権利がある。

コート上でジャンプをしたプレーヤーには、元の位置と違うところでも、ジャンプをした時点でジャンプをした位置と着地する位置の間に相手チームのプレーヤーが位置を占めていなかった場所に下りる権利がある。」

 

→ジャンプした後には着地する権利がある。

 

⑤「ジャンプをしたプレーヤーが元の位置と違うところに下りた勢いで、すでに近くにリーガルガーディングポジションを占めていた相手チームのプレーヤーと触れ合いを起こしたときは、ジャンプをしたプレーヤーに触れ合いの責任がある。」

 

→着地したら止まることが求められている。

 

⑥「相手チームのプレーヤーは、プレーヤーが空中にジャンプをした後からそのジャンプをしたプレーヤーの軌道に入ってはならない。

空中にいるプレーヤーの足元に入って触れ合いを起こすことは、通常はアンスポーツマンライクファウルであり、場合によってはディスクォリファイングファウルになる。 」

 

→空中にいるプレーヤーの軌道は強く守られている。

 

 

①~⑥をまとめますと、

・早く位置・空間を占めている方が有利である。

・シリンダー内でなら基本的にコンタクトに関して無敵である。

・ジャンプしたらそのあとの軌道と着地する権利は確保されている。

 ただし止まることが前提である。

といえるかと思います。

 

そんなこと当たり前だと思うかもしれません。

ではここで質問です。

 

「あなたのチームの選手は、このようなことをどこまで理解していますか?」

 

選手がルールブックを理解することの大切さ

こういったことを理解している選手とそうではない選手がボックスアウトの練習に取り組んだ場合を考えてみます。

 

理解できている選手はどうやって早く良い位置を占めるか、どのエリアまで手を使っても良いか、といったことを考えて練習することができるでしょう。当然ファウルは起こりにくくなることが予想されます。ジャンプした後に着地する・止まることの重要性も理解できていれば、負傷するリスクも軽減できるかもしれません。また着地・ストップなどの基礎的な練習から高い意識を持って取り組めることでしょう。

 

一方でそうではない選手は動き出しが遅れても無理やりコンタクトしにいったり、離れた場所にあるボールに対しても無意識に手を出してしまった場合に良いフィードバックを行うことができないでしょう。そしてそれは試合ではファウルとなってしまうかもしれません。またジャンプした選手に対してもコンタクトして怪我を生じさせるかもしれません。さらに着地やストップの練習にはあまり乗り気ではないことが多いと考えられます

 

上の話は極端な考えかもしれませんが、ルールブックに書かれている内容を理解することで選手の練習に対する取り組み方は確実に変わってくると思います。

 

またルールブックの考え方を紹介することで、コーチも選手に対してより明確に「なぜその練習が大事なのか」を説明できるのではないかと思います。

 

ぜひこの機会に選手とともにルールブックを学び直してみてはいかがでしょうか。

 

最後に

今回はルールブックに記載されている内容の確認という抽象的な内容になりました。

 

「ルールブックを深く勉強したほうが良い」という考えはValueWorksとも交流のあるアルバルク東京ユースの塩野コーチに教えられたもので、私自身そういう観点で練習を工夫してみると改めて気付かされることばかりでした。選手の理解度も向上したように感じます。

 

今回はリバウンドの練習という観点で、この考えをもとに記事を書かせて頂きました。

 

本当に素晴らしい考えで、いろんな場面に応用できるものなので、ぜひ多くのコーチに知っていただきたいと思います。

 

ただし理解していただきたいのは私自身は審判ライセンスを持っているわけでもなく、今回の記事はあくまでルールブックの文章を私なりに解釈した結果であるということです。

間違いや他の解釈などありましたら遠慮なく指摘していただけると大変嬉しく思います。

 

今回の記事がファールや怪我を減らし、より良い試合を行う一助となれば幸いです。

今回も最後までお付き合いくださり本当にありがとうございました。

 

出典:JBA OFFICIAL BASKETBALL RULES 2019 バスケットボール競技規則 PDF

   公益財団法人日本バスケットボール協会    

   http://www.japanbasketball.jp/files/referee/rule/2019rule.pdf

 



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