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リバウンドドリル構築(10)【大学HCの育成コラムVol.11】

2020.7.21

こんにちは。京都大学女子バスケットボール部の方城素和です。

今回も興味を持って頂きありがとうございます。

 

時間が空いてしまいましたが今回は前回紹介した考え方を用いて、京都大学女子バスケットボール部で前回紹介させて頂いたリバウンドドリルを2月中旬に実施したときに感じたことなどを7・8分程度でお伝えさせて頂きます。

宜しくお願い致します。

 

実際に取り入れてみて感じたメリット

実際に取り入れているのは以前にリバウンドドリル構築(3)で紹介した1on1のヘルプサイドボックスアウトドリルです。現在選手は8人なので、これを4人ずつの2組に分けて実施しました。

 

1月下旬まではこれをサイズで分かれていましたが、2月中旬にはできるだけサイズが混ざるように2組に分けてもらいました(分け方は基本的に選手に任せています)。実際にPGがCをボックスアウトしたり、逆にCがPGをボックスアウトする状況も発生しました。

 

 

このような状況でこそ生じた変化とはなんでしょうか?

 

① コンタクトの重要性を体感・再確認した

 

これは私だけではなく選手が感じていたことでもあります。

 

京都大学ではメニューが終わると次のメニューに移る前に選手が発言する機会を取ります。そこでそのメニューで思ったことなどがあれば発言する選手もいます(強制ではありません)。

この分け方を初めて実施した際に比較的サイズのない選手から「Cの選手のオフェンスに入るとまず内側に入れない。コンタクトが上手くて参考になる。」といったコメントがありました。

 

その次の日以降に見ていると確かにサイズがあるからリバウンドを獲得できているというよりも、ボックスアウトのクオリティが高く良いポジションを取れている結果リバウンドが獲得できる、というシーンが多く見られました。

 

この選手のコメントから考えると、サイズのない選手がコンタクトの重要性やそれに必要な技術を体感できたということが言えると思います。

またこれは京都大学ならではかもしれませんが、それをコメントしてくれたことでサイズのある選手にとっても再確認する機会となりました。さらにコーチである私自身にとっても新鮮な気づきとなりました。

 

② ルーズボールの激しさが上昇した

 

これは初回よりも回を重ねるごとに徐々に変化を感じたことです。

 

このドリルにおける条件設定として以前の分け方よりも少し遠い距離から(3ポイントラインの1.5歩くらい内側)シュートを打つことで、リバウンドが大きく跳ねやすくしていました。その影響もあってか床に落ちてルーズボールになるケースがそれなりに発生します。この時のルーズボールに対する競り合いが激しくなり、特にサイズのある選手が最後まで追うようになりました。

 

これは推測ですが、サイズのない選手はリバウンドを奪取するためにはルーズボールを獲得するのが近道だと判断して、ルーズボールを積極的に追いかけるのだと思います。それでもサイズのある選手にとってはリバウンドという自分にアドバンテージがある局面で負けたくないという思いがあり、それが最後まで追う姿勢につながっているのではないかと思います。

 

サイズで分かれていた時よりもお互いにチップしあったりした結果、コート外までも追いかけるシーンが増えたように感じました。またそういったシーンは練習の雰囲気をよくしたり選手の気持ちを掻き立てる効果があり、よりルーズボールに積極的になるという好循環につながっていました。

 

この2つが主に感じられた変化です。

次にデメリットについても考察してみます。

 

想定していたデメリットについて

前回の記事で想定していたデメリットは以下の2つです。

 

① 小さい選手にとって取れる可能性が低くなる(または大きい選手にとって可能性が高くなる)ことで選手のモチベーションが保ちにくい

② 体格差が大きいため負荷がかかりすぎる恐れがある

 

①については上で紹介したように、むしろモチベーションを高く上げる結果になったように思います。ただし、まだ短期的にしか行っていないためこのような分け方を毎回繰り返していくと少しずつモチベーションが低下する可能性はあると思います。

 

②についてもまだ短期的にしか行っておらず、回数も30秒~45秒を左右1セットずつしか実施していないのでなんとも言えません。ただ選手に対する身体的な負荷は以前よりも大きくなっていると感じます。それは体格差によるものではなく、むしろ選手がよりアグレッシブに取り組んだ結果なのかもしれません。

 

②について私なりの考えをまとめますと、体格差があまりにも顕著な場合を除けばそれほど大きなリスクではないように感じます。京都大学では最大で21cmの身長差があります。それでも見ている限りそこまでリスクのある組み合わせには感じませんでした。

 

おそらく身長差よりもトレーニングによる筋力差の方が大きく影響すると思います。したがって筋力差が大きいと感じられる場合には適切なトレーニングを実施するとともに、同じような体格の選手同士でリバウンドドリルに取り組み、コンタクトに慣れていくことが優先されると思います。

 

以上のことから私はリバウンドドリルについてもサイズで分けない組み合わせで行うことは効果的だと考えています。そして実際に実施する上でより効果を高めるためのポイントについても考えてみたいと思います。

 

実施する上で気をつけたいポイント

実際にサイズで分けない組み合わせでリバウンドドリルを行う上で、効果を高めるために考えられるポイントとして以下の4点が挙げられます。

 

① どのような状況を想定しているか明確にする

② 過程を重視する

③ 精神面での疲労の影響を考慮する

④ 分け方を適度な期間で変更する

 

①、②については前回の記事で触れている部分が多くありますので、そちらを参照頂ければと思います。ここでは③、④について説明していきたいと思います。

 

③ 「精神面での疲労の影響を考慮する」のは選手は普段と異なる負荷がかかる環境でプレーしているからです。

一見プレー上は疲労が見えなくても精神的な面で疲労が蓄積している可能性はあります。特にサイズのない選手にとっては「自分より大きな相手とリバウンドで競り合うこと」に対して気持ちの準備をして臨む必要のある選手もいるのではないか、と実際に取り組んでいる様子を見て感じました。

 

そういった姿勢は素晴らしいことですが、時間が長くなると精神的な準備が崩れ身体的な怪我につながる恐れがあると思います。また怪我にはつながらなくとも上で挙げたようなメリットが表現されなくなる可能性は高いと考えられます。

 

もちろん精神的な準備を保てる時間を延ばしていくことは重要だと思いますが、その変化をコントロールしていくためにも、コーチには精神面での影響を考慮した観察や工夫を行うことが求められると思います。

 

④「分け方を適度な期間で変更する」のはメリットが薄くなるのを避けるため、そしてサイズ別で分けることによるメリットも同様に重要であるからです。

 

上で挙げた2つのメリットはどちらも選手たちにとって新鮮であるから、高い効果を発揮するものだと考えられます。実際に何度か練習に取り組んでみたところ、「慣れ」によってか良い影響が減少している印象も受けました。慣れることによって効果が浸透する面もあると思うのですが、長期間にわたりすぎると効果が薄れるのは分け方にも当てはまると思います。

 

またサイズのある選手同士で行うことによってより高い質のボックスアウトを経験することや、サイズのない選手同士で行うことでより激しいルーズボールを経験できるであろうことはサイズで分けた場合の大きなメリットですし、サイズのある選手同士内でもサイズ差があるので自分より大きい選手と対戦する場合のケースなどを経験することも重要です。

 

具体的にどの程度なのかは明言できませんが、選手が楽しさを感じられなくなる前に分け方や人数・ルール設定などを少しずつでも変化させてあげられると、選手は常にフレッシュな気持ちで練習に取り組めるのではないでしょうか。

 

ここで述べたように分け方を変えることで新しい気づきやその分け方ならではのメリットを得ることができますが、同じ練習ばかりだとその効果が下がってしまったり、デメリットの方が大きくなってしまう可能性があります。そのためにもコーチは常に観察し、課題をピックアップし、解決できるような練習に変化させていくことが求められるのだと思います。

 

最後に

前回のブログでまとめたアイデアを実施してみたことで私自身も大きな気づきを得ることができました。また選手にとっても楽しめるアイデアだったようで、今までと少し違った角度からの経験を得ることができたようです。

 

コーチにとってもチャレンジすることは重要な要素であるし、そのチャレンジは選手にも良い刺激を与えてくれるのだと改めて感じました。

 

選手・コーチ双方が常にチャレンジしていくことでValueWorksがミッションとして掲げている「選手とコーチが共に切磋琢磨し、互いに成長し続ける組織」も実現に近づく気がします。

 

この記事が皆さんが今の練習をアップデートするためのチャレンジのきっかけとなれば幸いです。

今回も最後までお読みくださりありがとうございました。



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